2021年6月10日
新緑が美しい季節にもかかわらず、自由に外出できないことがもどかしいですね。
この1年半は、誰もが人生のなかでもっとも、人とのかかわりを制限される時間だったことでしょう。
でも、目に見える距離の遠さは、目に見えない気持ちの近さを再確認させてくれます。
文屋はこれまで、さまざまな出版物やセミナーを手がけてきました。そのすべては、想いを共有できる仲間と出会い、そのつながりが広がることで築かれた財産です。
このたび、新たに出版する絵本も同じです。そしてこの絵本そのものが、人と人とのつながりの尊さに気づかせてくれる作品なのです。
今回は、7月に文屋から出版予定の絵本『ちよにやちよに~愛のうた きみがよの旅』を創り上げた「つながり」についてお話します。
絵本の作者である白駒妃登美(しらこまひとみ)さんと文屋を結びつけたのは、松岡沙英さん。本名は三宅美穂子さんとおっしゃり、有限会社ウーヴルの社長として社員研修を手がけています。
ウーヴルでは、絵本を使ったユニークな研修プログラムを展開しています。仕事や人生に幸せを感じられる「キラキラ社員」を育てるウーヴルの社員研修。ここで文屋の書籍も使ってくださっています。
絵本を教育素材としてきた彼女は昨年末、絵本プロデューサー「松岡沙英」としての初めての想いを、文屋の木下豊に伝えました。
「今を生き、未来を創る日本と世界の子どもたちに届けていきたい」。松岡沙英さんが熱く語った絵本の構想は、博多の歴女、白駒妃登美さんがえがく『君が代(きみがよ)』の物語でした。
わがきみは ちよにやちよに
さざれいしの いは(わ)ほ(お)となりて
こけのむすまで
日本の国歌『君が代』の本歌は、平安時代に詠(よ)まれた和歌です。のちに、歌い始めに「きみがよは」と手が加えられました。
この和歌は、平安時代に生きたある人物が「あなたが、ずっとしあわせでありますように」と、恋しい人に寄せた熱いラブレターでした。
そして特殊な立場の人にかぎらず、相手を想う深い愛情を謳(うた)う歌として、長く受け継がれてきたのです。
平安時代から約1000年の時が経ち、私たちはいま「令和」の時代を生きています。
「悠久の歴史と香り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく、厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたい」
そんな願いを込めて名づけられた、元号「令和」。
しかしいま「ずっとしあわせであること」は、決して当たり前ではないように感じます。
白駒妃登美さんはこの歌のことを「先人たちから今を生きる私たちに、そして同じ地球に暮らす家族に向けられた、時空を超えたラブレター」と語っています。
令和の時代にふさわしく、日本人のこころを再認識させてくれます。
きみがよは 長寿と しあわせを 祈る歌
たいせつなひとを おもいながら うたうと
笑顔の輪が ひろがるよ
博多の歴女と呼ばれる白駒妃登美さんは、著書や講演をとおして、日本の歴史や文化の素晴らしさを伝える活動をしています。小中学校など教育の場に招かれ、保護者や子ども、先生方に向けて話すことも多いそうです。
そこで、国歌『君が代』の本来の意味を知った保護者や先生方からは、こんな声が寄せられます。
「もっと早く知りたかった」
「これで安心して、きちんと子どもたちに『君が代』の意味を伝えることができる」
「こんなに素敵な和歌を国歌にしている国であることに、誇りを感じる」
こうした声が、白駒妃登美さんと松岡沙英さんを動かしたのです。ところが二人は、『君が代』を「賛否の枠」に押し込める現実に直面しました。
ある出版社からは「『君が代』のテーマは、児童文学の世界ではタブーです」と断られ、ある知識人からは「政治的に繊細なテーマなので、気をつけるように」と助言されたのです。
木下はその話を聴き、この出版の構想は「天からの授かりもの」であると確信しました。
これは文屋の使命であり、このつながりが生み出す絵本こそ、まちがいなくこの国に生きるすべての人たちの、たいせつな財産になるものだ、と。
『万葉集』研究の第一人者で、「令和」の名づけ親といわれる中西進先生も、この絵本の構想に大賛成してくださり、すばらしい推薦文を書いてくださいました。
中西進先生が「万葉集からの伝統を継ぐまさに真珠のごとき愛の歌」と評する『君が代』のこころ。
読み語りによって、幼児教育などにも活用できる絵本です。ぜひ子どもたちと一緒に、深く味わってみてください。
絵本『ちよにやちよに~愛のうた きみがよの旅』を子どもたちに届ける白駒妃登美×文屋の「寄付本プロジェクト」に、ぜひご協力ください。
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