伊那食品工業(株) 最高顧問 塚越寛さんの提唱する木の年輪のように毎年、緩やかにたくましく成長を続けていく経営哲学を全国と世界に普及するプロジェクト
2019年に出版した集大成のご著書『末広がりのいい会社をつくる』で塚越さんは、年輪経営について、次のように解説しています。
「樹木の年輪は、雨の少ない年も、寒くても、暑くても、毎年必ず一つずつ輪を増していきます。また、木が若いうちは年輪の幅が広く、樹齢の長い木になるほど成長のスピードを抑えて年輪の幅を狭めていきます。大きく育った後は無理な成長をやめ、しかし止まることなく確実に、バランスよく、一つひとつ年輪を加えていくのです。また、無理なくゆっくりと育った大きな木ほど、年輪が緻密になり、たとえば建築や家具の良材として役に立ちます。
このような木の成長の姿は、そのまま会社にも当てはめることができます。
起業したばかりの若い会社は、勢いよく伸びていくのがよいでしょう。ある程度の規模に拡大したら、成長のスピードを下げ、景気の波などの外部環境に左右されることなく、毎年わずかずつでも着実に成長し、末広がりに永続していくことが肝要です。適正規模に育った会社は、やみくもに成長を急ぐのではなく、社員や地域に貢献することを第一の使命とすべきなのです。
このようなあり方を「年輪経営」と呼んで、理想的な会社の姿と捉えています。会社に関係する人たちの幸せを真剣に考えたとき、利益の多さや成長の速さではなく、末広がりの永続こそが価値だという結論に達したのです。」
年輪(カラマツ)
塚越さんはこの節「樹木からの大いなる学び「年輪経営」」で、「末広がり」に成長していくことの大切さを、次のように強調しています。
「木の成長を別の角度から眺めると、「末広がり」と捉えることもできます。
末広がりの姿を漢数字の「八」になぞらえて、年輪経営を「八の字経営」と呼ぶこともできるでしょう。
「いい会社」をつくるためには、年輪経営を継続していくことが欠かせません。年輪経営こそが、会社のあるべき姿の本質であり、経営者のおこなうべき仕事なのだと思います。
当社は創立からずっと、ゆるやかな増収・増益を続けてきました。これは増収・増益を目標として取り組んだからではなく、年輪経営を旨として会社の舵取りをおこなってきた末の結果に過ぎません。
目先の利益や急成長にとらわれていては、社員の幸せ・世の中の幸せという本来の目的を見失い、会社は永続することができません。」
富士山と扇、早春を告げる黄色い花・・・末広がりのめでたい尽くし。
葛飾北斎画『福寿草と扇面』
人間は自然の一部であり、地球という生命体の上で生かされている存在です。自然の摂理、大自然の掟(おきて)、神さまの真理、何か偉大なるものの定め・・・どんな表現を使うとしても、大自然のありようから、生き方や働き方や営み方を学ぶのは、末広がりの幸せをつかむための、真っ当なありようだと思います。
樹木を見つめてみましょう・・・
・年輪の姿 ・根っこの張り方 ・枝葉の張り方と根とのバランス ・葉脈のかたちと木全体のかたちの相似 ・落ち葉の養分が土をつくり、根に行き渡ること・・・そして、人間の寿命をはるかに超える長命であること。さらに、樹齢千年に至ってもなお、今年の春も、大空に末広がりに張りだした枝から、瑞々しい若葉を芽吹かせること・・・
樹木の姿から、わたしたちが学べることは、広く、深く、多様です。
商人で作家・YouTuberの斉藤一人さんは「木には葉っぱ、人には言の葉」と語ります。
俳人の荻原井泉水(おぎはらせいせんすい)は、次の俳句に昇華させています。
「楠(くすのき)千年 さらに今年の若葉かな」
年を重ねてもなお、いえ、年を重ねたからこそ、生き生きと明るい言の葉(ことば)を発する人でありたいものですね。
このことを塚越さんは「いい老舗は、新しくよりよい生産方法や材料を常に取り入れていく」と言います。
塚越寛さん(左)とトヨタ自動車社長の豊田章男さん(右)
塚越寛さんを経営の師と呼ぶトヨタ自動車社長の豊田章男さんは、塚越さんの集大成のご著書『末広がりのいい会社をつくる』に「私の教科書」と題する推薦のメッセージを書いて、本書の帯に寄せてくださいました。
「この本は、本気で社員を愛し、本気で地域に寄り添い、本気でお客様と向き合い、本気で次世代を想い、悩み、決断し続けている経営者のリアルストーリーである。そして、私が憧れる大先輩の物語でもあります。変革の時代に、「ブレない強さ」を教えていただきました。塚越さん、私もしっかり後を追っていきます。」
トヨタ自動車株式会社 取締役社長 豊田 章男
文屋の「末広がりの年輪経営プロジェクト」では、塚越さんのご著書の普及はもとより、塚越さんの理念と実践に学ぶオンラインスクールの運営、伊那食品工業や、文屋のある長野県小布施町の現地を訪ねて学び合うセミナーの開催などを続けて参ります。ご期待ください。
かんてんぱぱガーデンに立つ塚越寛さん
長野県伊那北高等学校在学中に肺結核にかかり、3年間の闘 病生活を送る。快癒した翌年、21歳で地元の製材工場に就職した後、その系列会社で破綻状態だった寒天メーカー伊那 食品工業に社長代行として入社。以来、「いい会社をつくり ましょう」という、いまやよく知られる社是のもと、景気に 左右されない年輪経営を続けている。 研究開発に力を入れると同時に、よりよい原料を安定的に確 保するため、モロッコ、チリ等の海外メーカーを育てたほか、 酒造メーカーの育成等の多角化を図りながら、地元の発展に も注力している。本社エリアは「かんてんぱぱガーデン」と 呼ばれ、多くの来訪者を迎えている。
《受賞歴》
【科学技術庁長官賞】
【黄綬褒章】
【日経ニューオフィス賞】
(日本経済新聞社・社団法人ニューオフィス推進協議会)
【農林水産大臣賞】
( リサイクル推進協議会)
【最優秀経営者賞】
第20回中堅・中小企業優秀経営者顕彰制度(日刊工業新聞社)
【グッドカンパニー大賞 グランプリ】
第40回社団法人中小企業研究センター賞
【旭日小綬章】
【渋沢栄一賞】
(埼玉県)
《著書》
『新訂 いい会社をつくりましょう』、『幸福への原点回帰』(鍵 山秀三郎氏との共著)、『映像本 いい会社をつくりましょう』 『日めくりカレンダー 塚越寛 日々の言葉 人も社会も幸せに なる年輪経営』(以上、文屋)、『リストラなしの「年輪経営」 いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長』 (光文社)、『幸 せになる生き方、働き方』(PHP研究所)、『「いい会社」っ てどんな会社ですか? 社員の幸せについて語り合おう』、『年輪経営 一度きりの人生を幸せに生きるために』(以上、日 経BP社)など。
二宮尊徳翁の「報徳」の教えを広げるための全国組織である大日本報徳社(静岡県掛川市)が発行する月刊誌『報徳』。2020年新年号に、塚越寛さんと大日本報徳社社長の鷲山恭彦さんの対談が掲載されました。
2004年に塚越寛さんが出版した初めてのご著書『いい会社をつくりましょう』を制作するきっかけになった雑誌「KIWI」1992年4月号の表紙と記事です。フリーライターをしていた木下豊(当時33歳。現・文屋代表)が、取材に派遣され、インタビューをしてまとめました。塚越さんはこの記事をたいそう気に入ってくださり、2002年、初のご著書の編集者として木下をご指名くださいました。
塚越さんは、10年ぶりに再会した木下に、「あれからこの記事を何千部も印刷して、社員やお客様、お取引先などに配ってきました」とお話しくださいました。
『いい会社をつくりましょう』は、それから2年あまりの制作を経て誕生、ロングセラーとして読み継がれています。運命的な雑誌です。
「いい会社をつくりたい」「会社を永続させていきたい」と願い、模索されている経営者のみなさまに贈る
映像(二部構成84分間)、音声データ、取材メモの3点セット
長男と次男の二夫婦が営む小布施牧場株式会社では、年輪経営を実践しています。