2021年9月9日
新学期が始まりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大はつづいています。
いま、もっとも感染が広がっているデルタ株は、コロナの変異株のなかでも感染力が強いことが指摘されています。
とくに心配されているのが、子どもへの感染。デルタ株の感染が広がったここ数ヶ月で、10代以下の感染率は大きく上がり、新学期の学校再開を懸念する報道があとを絶ちません。
子ども関連のクラスターのニュースを聞けば、親たちは当然、学校の休校を望みます。
わが家の息子が通っている小学校は休校にならず、感染対策をより徹底する連絡とともに、新学期が始まりました。でも、クラスメートのなかには感染を恐れ、自主休校している子どもがいます。
新型コロナに関しては、だれもが納得する答えはまだありません。たくさんの情報と賛否ある選択肢のなかで、自分で判断しなければならないのです。
コロナとともに生きる私たちにとって、「正しく知り、正しく恐れる」とはどういうことなのか。
そのことを考えるひとつの材料として、4月に文屋が出版した絵本『おやすみルーシー~ウイルスがやってきた』をご紹介します。
この本は、スタンフォード大学で免疫の研究をしている新妻耕太さんとルーシーさんご夫婦が制作した免疫絵本です。
人の免疫細胞が外部から入ってきたウイルスに反応するしくみを、ルーシーという女の子の冒険のストーリーとして描いています。
ある夜、ぶるぶる震えて鼻水や咳がでてきたルーシーは、布団に入って眠ることにしました。すると、夢の中でウイルスと一緒に自分の体のなかに迷い込んでしまいます。
「やぁ ぼくたちは ウイルスだよ
このぬまの そこは
なかまが ふえる ゆめのせかい
きみもいっしょに もぐろうよ!」
体の奥深くに潜り込み、つぎつぎに増えていくウイルス。怖くなったルーシーに声をかけるのは、免疫細胞を模した仲間です。
どんどん増えるウイルスと闘うために、花火を上げてもっとたくさんの仲間の細胞を呼びます。
「たいへんだ~ みんな あつまれ~!!」
ルーシーも、仲間探しを手伝います。ウイルスの情報と地図をもって、体のなかを駆けめぐるのです。
作者の新妻耕太さんとルーシーさんご夫婦が、この絵本を制作するにあたって強く意識したこと。それは、子どもたちにもわかるようなやさしいストーリーのなかに、ウイルスや免疫細胞に関して科学的に正確な情報を示すことです。
作画を担当した こまちだたまお さんも、綿密に打ち合わせて挿し絵を描きました。色彩豊かな親しみやすい絵は、ウイルスやヒトの体内細胞、血管やリンパ管などの特徴をしっかりと模しています。
じつは こまちだたまお さんは、新妻耕太さんの子ども時代の絵の先生。「創意工夫を絶やさず、作品を最後まで作りとおす耕太さんは、昔から変わっていない」と語っています。
絵本の巻末には、読み語る親や先生が子どもたちに免疫のしくみを説明できるように、わかりやすい解説もついています。
いま、発信されているコロナ情報の「正しさ」は限定的です。
たとえば、多くの人が注目するワクチン接種に関する情報。ファイザー、モデルナなどのワクチン効果の差、また認可されて間もないアストラゼネカの副反応などは、私たちの判断に大きく影響します。
でも、これらはあくまでも現在の、しかも特定の状況下におけるデータからわかりつつあることです。
日々刻々と状況が変化するだけでなく、一人ひとり生活状況や身体状況によっても、ワクチンの効果や副反応は異なるでしょう。
コロナに関する情報は、判断基準としては有効です。でも、すべての人にとって、いつどんなときも等しく「正しい」とはいえないのです。
それに比べ、人の体の免疫機能に関する情報は、これまで長く培われてきた研究の蓄積によって明らかにされてきました。
そのしくみを知り、できるだけ体にウイルスを入れないような行動(予防)と、もし入ってしまっても闘いに負けないように体を調える生活習慣(養生)に努めること。
それは、いつどんなときも等しく「正しい」といえるはずです。
そのことを理解したうえで、一人ひとり異なる状況にきちんと向き合うこと。それが、たくさんの情報のなかからベストな答えを探す出発点になるはずです。
ルーシーの冒険をとおして、ご家庭や教育現場でもう一度、いま自分たちにできること、すべきことは何かを考えてみませんか。
絵本『おやすみルーシー~ウイルスがやってきた』のご購入は、下記の文屋サイトからどうぞ。
↓
https://www.e-denen.net/cms_book.php?_id=47