2006年8月24日

「そよぐ」の漢字は?

ある会社についての文章を書かせていただいております。桜をこよなく愛した創業者が植えた桜の古樹。根元には後継ぎになるであろう若い細い幹が立っている様を描きました。「頭(こうべ)をすっくと天に向けて、風にそよいでいる」。
で、「そよぐ」という何気なく使ってきた言葉に興味が湧いて、パソコンで漢字変換してみました。「戦ぐ」。なぬ!? 戦い、戦争・・・? 辞書を引いてみると、こう出ています。「そよ・ぐ 2 【▽戦ぐ】(動ガ五[四])草木などが風に吹かれ、静かな音を立てながらゆれ動く。」 意味は思っていたとおりなのですが、漢字は戦ぐ、なのですね。
白川静先生の『字統』で「戦」にあたると、左の単は盾(たて)、右の戈(か)は、ホコという武器。とても、そよぐの意味には似合いません。戦の訓読みには、「たたかう」、「そよぐ」のほかに、恐れおののくの「おののく」があります。一文字がこれほどに複雑な、正反対ともいえる意味を持ち合わせているのですね。
「勇猛果敢に戦う兵士も、内心は恐れ戦き、その気持ちは風に戦ぐ葦のように揺れている」ということなのでしょうか? 心の機微、詩を内包しているのですね。漢字っておもしろい!
きょうは、母が左目の白内障の手術のため、午後、須坂市の宮本眼科さんへ車で送迎しました。30分ほどで手術室から歩いて出てきて、「ちょっとだけ痛かった。がまんはできたけどね」。30代の敏腕医師、宮本先生にすべてを委ねたひとときでした。いま、自宅のあたくしの仕事場の隣の自室で休んでいます。
日中はアブラゼミの真夏、早朝や夜はコオロギが庭で鳴く初秋です。

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