2024年7月4日

2024年7月3日に新紙幣が発行開始――小布施は葛飾北斎ゆかりの地として情報の発信源に

2024年7月3日、一万円札、五千円札、千円札の新紙幣が発行されました。紙幣は偽造防止などを理由に約20年ごとに変更されますが、一万円札について前回は福沢諭吉の肖像変更がなく、40年ぶりに渋沢栄一へと変わることになります。

日々の消費生活において文字通りの「顔」となるお札の肖像には、日本が誇る歴史的な人物が選ばれます。また裏面には、日本らしい自然や文化を象徴する図柄が採用されてきました。

今回、新千円札の裏面に選定されたのは、葛飾北斎が描いた『富嶽三十六景・神奈川沖浪裏』。北斎はモネ、ゴッホ、ゴーギャンなど世界の芸術家にも影響を与えた江戸時代の絵師であり、「グレート・ウェーブ」とも称されるこの絵はその代表作です。

モナリザにも匹敵する名画として世界中に知られるこの絵が新紙幣に採用されたことで、北斎への注目はますます高まるでしょう。

北斎が晩年に訪れ、多くの秀作を残した長野県小布施町はいま、北斎ゆかりの地としての重要な情報の発信源となっています。

テレビ番組でも紹介された、知られざる渋沢栄一と葛飾北斎の接点

2024年6月22日(土)、 日本テレビ系列で放送された「SHOWチャンネル大人の社会科見学SP」では、新紙幣に採用された渋沢栄一と葛飾北斎それぞれに縁のある地を巡る旅の様子が放映されました。

ナビゲーターの櫻井翔さんらは渋沢の生まれた埼玉県深谷市、そして北斎ゆかりの地である小布施を訪れます。

渋沢は現代にも名を残す企業も含めた500以上の企業の設立に関わり、「日本資本主義の父」とも称される人物。教育や社会事業にも尽力しており、新紙幣の肖像に選出されたのは必然です。

その渋沢の転機となったのは1867年、パリ万博への随行でした。ここでヨーロッパ各国の経済活動に刺激を受けたことが、日本の近代化を推進するきっかけとなります。一方、パリ万博は日本が初めて参加した万国博覧会であり、日本の芸術品として葛飾北斎の作品が多く出展されたことも記録されています。

経済、文化の側面において現在もなお日本に大きな影響を与えている歴史上の人物の意外な接点が、パリ万博にあったということです。番組でこの興味深いストーリーが紹介されたとき、櫻井さんが語った名言には深くうなずけます。

「(渋沢、北斎の二人が)財布の中で出会うんだ」

葛飾北斎が最晩年に画業を究めた聖地・小布施を世界へ発信


番組のなかでも櫻井さんらが訪れた「北斎館」は、小布施の中心街にある美術館です。ここには、北斎が80歳を超える晩年にこの地で描いた多くの秀作が収蔵されています。

小布施では40歳もの歳の差のある地元の豪商・高井 鴻山(こうざん)の歓待によりアトリエも提供され、北斎は何度も長期滞在して肉筆画を中心とした絵を描きました。


北斎は75歳のとき「80歳でますます成長し、90歳でさらなる奥義を極め、100歳で神の域へ」と記しています。北斎が最晩年まで画業を追究し続けたことを如実に表す文章といえるでしょう。

「生涯現役」を貫き、90歳で亡くなるまで画業を究めた北斎が小布施でどのように過ごしたのか。その経験を多くの北斎ファンに共有したいと願い、北斎館と文屋は「北斎が見た小布施」を紹介するパンフレットをこのほど完成させました。

北斎ゆかりの地として情報を発信するために英語で制作されたパンフレットは、北斎の息づかいが感じられる写真や文章で埋め尽くされています。

北斎館を起点に「北斎の見た小布施」を紹介

このパンフレットでは、小布施を「北斎館エリア」「北斎館周辺南エリア」「北斎館周辺北エリア」「小布施郊外・東北エリア」「小布施郊外・西南エリア」の五エリアに分け、北斎が残した作品や江戸期から残る寺院、建物や風景、食されていた野菜や果物などを写真と文章で説明しています。

一例として「北斎館エリア」を紹介すると、高井鴻山記念館、北斎を迎えた鴻山の邸宅をはじめ、当時から残る松川用水路や龍摺石(りゅうずりいし)、桝一市村酒造場の酒蔵や北斎から鴻山への手紙など、180年の時を超えていまもあるさまざまな「北斎の見た小布施」が取り上げられています。

ページをめくりながら小布施のまちを歩けば、北斎の息づかいを感じることができる――このパンフレットは、小布施を訪れる北斎ファンの想像力を無限に広げるものになるでしょう。

老いを知らずに進化し続けた北斎の歴史を感じながら、新札の発行とともに始まる新しい時代を創るまちとして、小布施は新たな歴史を刻みます。

「北斎が見た小布施」パンフレットは、北斎館をはじめとする各所で配布しております。ご興味があればぜひ、小布施に足をお運びください。


美日常が広がる小布施を訪れるなら・・・
ひと・こと・まちをまるごとつなぐ小布施の宿り場 《ゲストハウス小布施》


江戸期から残る民家と土蔵を改築した3部屋のみのお宿。パンフレットでも「北斎館周辺北エリア」で樋田家敷地内の建物として紹介されており、北斎のアトリエから歩いてわずか3分の場所に位置します。

ゲストハウスで過ごせば、創作の合間にこの建物を眺める北斎の姿が思い浮かぶかもしれません。

ようこそ小布施の宿り場 ゲストハウス小布施へ

信州小布施 美日常の旅へのいざない 日常を離れて、信州小布施の里へ小さな旅を楽しみませんか。 小布施の宿り場 《ゲストハウス小布施》でのご滞在を、あなたの豊かな人…


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