2024年2月22日

世界最先端のまちづくり、小布施のウォーカブルシティ構想とは? 

日に日に日差しが暖かくなり、散歩が楽しみな季節となりました。つぼみがほころび、花々が咲きはじめる美しいまちを歩くことを想像すれば、自然と心が躍ります。

脱炭素時代に、利便性を追求する「車」中心のまちから、交流が広がる「人」中心のまちへ――。世界各国と足並みをそろえ、いま日本でも「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成が進んでいます。

2020年9月に施行された「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」によって、いわゆる「ウォーカブルなまちづくり」の事例は全国に広がりつつあります。しかしそれよりもずっと以前から、このウォーカブルシティ構想は長野県小布施町で議論されてきました。

小布施の真ん中を通る国道403号線を車で走っていると、町に入ったとたんにガラリと雰囲気が変わることに気づく方は多いでしょう。この道のあり方を中心に、小布施では世界最先端をいくまちづくりの対話が続いています。

文屋は2023年12月に、『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)を出版しました。

本書は小布施のまちづくりを先導してきた「二人の市村」」――いとこ同士の市村良三さんと市村次夫さんの歩みをまとめた一冊です。

伝統と新しさが共存する景観整備を起点に、二人が独自のビジョンをもって進めてきた小布施のまちづくり。ここには当初から、ウォーカブルシティという視点がありました。

時を経ても変わらぬ「道」のあるべき姿とは

1980年代に老舗栗菓子店「小布施堂」を30代で継承した良三さんと次男さんは、他の栗菓子店とは異なり、町外進出ではなく小布施という本拠地にすべての力を注いできました。この小布施のまちづくりにおいて、二人は歴史を掘り下げ、そこに流れる精神を学ぶことをずっと意識しています。

江戸中期から幕末にかけて繁栄した小布施では、いまの国道403号線は「谷街道」と呼ばれていました。古い歴史を持つこの道はかつて、街道沿いの家々が門前に庭木を植えて維持管理しており、住民たちが美しい公共空間づくりを支えていたのです。

そして良三さんと次夫さんが子どものころ、この道を通るのは自転車や荷車、人が中心であり、立ち話をしたり将棋を差したりと日常的な交流が生まれる場でした。

しかし1959年に国道403号線の舗装が始まると、少しずつ車が中心の道路へと変化していきます。昔ながらの町並みや景観が壊され、いつの間にか「車が通って危ないから人は近寄ってはいけない」という存在になっていました。

道路ではなく、ここに通っていた精神や、あり様を大切にした道をつくりたい――。

このおもいをずっと抱えてきた二人ですが、道路の整備によって「道」づくりの担い手も変化し、街路樹の手入れは住民ではなく行政の仕事になっていきます。

しかし2009年、転機が訪れます。このとき小布施町長を務めていた良三さんは、道路に関する苦情がきたことを好機に変えました。その後2011年から2012年にかけて、国道403号線の沿線の住民、土木の専門家、建築家、県や町の行政職員、電力会社を集い、国道403号線のあり方を考える会議を定期開催します。

市庭(いちば)通り構想で、「道」の新たな価値観を世界へ発信

小布施町長として「協働と交流」を旗印としていた良三さんにとって、住民をはじめ関係者や専門家たちとの対話はいつもまちづくりの基本にありました。その後2016年には「小布施町国道403号新しい市庭通りを創生する会」をつくり、対話を重ねて「道」づくりの新たな価値観をつくっていきます。

そしてついに、小布施流の道のあり方として「市庭通り」の構想がまとめられました。農商工業と生活が一体化し、そこに生きる人たちが明るくいきいきと、時にはにぎわいを味わいながら暮らせる小布施らしい道空間です。

小布施の事例は2017年には国のガイドラインの一つとして取り上げられました。さらに2018年には、長野県総合5カ年計画の重点事業の一つとなり、まずは小布施中心部の100m がモデル整備区間として工事されることになりました。

さまざまな工夫が盛り込まれたこの構想のなかで、特に注目すべきは「道幅を変えない」ということです。それは車がスピードを出せる道路ではなく、むしろゆっくり走ってふと立ち寄りたくなる道。歩道は排水溝の改良や電柱の地中化によって整備され、休憩場所や緑化の工夫で住民と来訪者の交流が生まれます。

国道でありながら時速20km以下で車が走行し、人々がにぎわう、まさにここにあるのはウォーカブルシティの構想そのものです。まちづくりを始めたころから良三さんと次夫さんが持ち続けてきたビジョンが、国道403号線の整備によって実現しようとしています。


ただ流行に乗るのではなく、長年考え続けて対話を重ねてきたからこそ、小布施の洗練されたまちづくりには世界に誇れるものがあります。

ただ歩いているだけで幸せな気持ちになれるまち、小布施であなたも世界最先端のウォーカブルシティを体感してみませんか。

『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(税込2,200円)は、下記よりご購入いただけます。

【文屋サイト】
https://bunya.shop-pro.jp/?pid=178006972&fbclid=IwAR38iqc99kfcEzJ9qlTWy3ryOIwkL8HQLKSZ6LN6x0Lh4Fltlo1D8Kmlbgw

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