2024年2月8日

小布施に学ぶまちづくりのヒント⑥―世代間の交流、知恵と情熱を尊重し、たったいまの価値観で判断しない

地方創生において「関係人口」とは、住民だけでなくさまざまな形である地域に関わる人の数を表します。関係人口の拡大は、まちづくりにおける「人と人との関わり方」の可能性を大きく広げていきます。

一般に関係人口はふるさと納税やイベントサポートといったファンベースの関わり、もしくは副業やテレワークなど仕事ベースでの交流を軸としますが、実際の関わり方は無限といえるでしょう。

長野県小布施町は、人口11,000人ほどでありながら関係人口が多く、生活者と来訪者の交流がまちづくりに新たなアイデアを創出する町です。

文屋は2023年12月に、『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)を出版しました。

ファンや移住者など、さまざまな人々の交流によって独自の魅力が生まれた小布施には、いま年間120万人もの人々が訪れています。本書はこの小布施のまちづくりの軌跡を描く一冊です。

本書の主役である「二人の市村」――いとこ同士の市村良三さんと市村次夫さんは、著者である磯野謙との対話を通して「まちづくりのセンスを磨く19ヒント」を紡ぎ出しました。今回は、その最後の4つをご紹介します。

16.世代間の交流をする 

2005年から16年間、小布施町長を務めた市村良三さんはまちづくりの旗印として、「協働と交流」を掲げました。なかでも力を入れていたのは地域内外の若者との関わりです。

2012年には、第1 回「小布施若者会議」を開催。新しいライフスタイルや事業を提案する若者たちを募り、全国から240 人以上の若者たちが小布施に集まって議論を交わしました。

また2013年には一般社団法人HLABとの共催により、小布施町は高校生向けのサマースクールを開始しています。地域での共同生活を通じて互いに学び合う場づくりを支援するため、国内外の大学生がスタッフとして小布施にやってきます。

「若い人はいまの時代を教えてくれる先生」と語る良三さんは、自身も若者たちと本気で話し合うことに価値を見出していました。意見を押しつけるのではなく世代間で交流することが新しい価値を生むと信じ、まちづくりでそのことを実践してきたのです。

17.知恵や情熱がある人を引き寄せる 

長く住んでいるかどうかは関係ない、もっと言えば、住んでいなくてもいい。たとえ短い期間でも、小布施に貢献してくれていることに敬意を持つことが小布施らしさだ――。

そう語る良三さんにとって、本書の著者である磯野謙さんもまた大切な存在でした。磯野さんは「エネルギーから世界を変える」という信念を持って、自然電力株式会社を立ち上げた若き経営者です。磯野さんとの会食でそのおもいに触れた良三さんは、直筆の手紙を送って交流を続け、両者は小布施におけるエネルギー改革のパートナーとなりました。

小布施若者会議やHLABのサマースクールに参加した若者たちも含め、良三さんは年齢や肩書き、実績にとらわれず、きらりと光るものを持つ人を見つける目利きでした。これまでに、知恵や情熱がある多く人財を小布施へと引き寄せています。

多彩な分野の専門家を招いたトークイベント「小布施ッション」を仕切った次夫さんも、良三さんと同じおもいでした。セッションに参加した人々の知恵を借り、交流を通して情熱を分かち合いながら小布施の魅力を創り上げてきたのです。

JR九州の車両デザインで著名な水戸岡鋭治さんもまた、小布施ッションで次夫さんと意気投合した人物の一人。水戸岡鋭治さんは町内のレストランや町営駐車場などをデザインし、小布施のまちづくりに貢献しています。

18.たったいまの価値観で判断しない 

方丈記の冒頭文「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」とは、すべてのものは移ろい、変わりゆくということ。これに続く一節は、良三さん、次夫さんのまちづくりの核にある教えです。

土地も町並みも、そこに流れる精神も、過去から受け継ぎ、未来へと渡す「預かりもの」。だからこそ、まちづくりの判断は「たったいま」の価値基準だけで決めてはいけないということです。

道一つとっても、現在の利便性を考えた車だけの道路であってはならない。そこに通っていた精神性や歴史を大切にして、未来につながる道をつくりたい。そのおもいで、いまも小布施町内の道路のあり方が議論されています。

19.二人で役割を分担する 

まちづくりにおいて、互いが唯一無二のパートナーであった良三さんと次夫さん。次夫さんがビジョンを描き、良三さんがそれを具現化する。それぞれの強みを尊敬し合ってきたからこそ、二人は絶妙な役割分担で小布施のまちをつくってきました。

惜しくも先に旅立ってしまった良三さんのおもいを次夫さんはしっかりと心に刻み、これからも「二人」は、壮大な構想をもって新たな挑戦を続けていきます。

「関係人口」という言葉が生まれるずっと以前から、人と人が交わることで引き出される大きな力を知っていた二人の原点は、互いの存在だったのかもしれません。

本書でまちづくりを磨くヒントを得られたなら、「関わり」によって創発するパワーをきっとあなたのまちづくりにも生かすことができるでしょう。

『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(税込2,200円)は、下記よりご購入いただけます。

【文屋サイト】
https://bunya.shop-pro.jp/?pid=178006972&fbclid=IwAR38iqc99kfcEzJ9qlTWy3ryOIwkL8HQLKSZ6LN6x0Lh4Fltlo1D8Kmlbgw

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