2024年1月11日
2024年は、令和6年能登半島地震という大きな災害による悲しい幕開けとなりました。被災された方々が心安らかに過ごせる日が一日も早く訪れますよう、心よりお見舞い申し上げます。
被災地域の復興を応援するためにも、他の地域の方々は日常を大切に、新年をさらなる発展の年にしていきましょう。
「いま、ここ」の日常を礼賛しながら、明るく楽しく生きる人々がつくるまち――長野県小布施町では、1月14日、15日に「安市(やすいち)」が行われます。
小布施安市は、毎年同じ日に行われる伝統行事です。江戸時代以降に北信濃地域の社会経済活動の中心地へと発展した小布施にて、月6回開かれていた「六斎市」を引き継いでいます。
こうして歴史を大切にしながらも、未来につながる新しい文化を築くまちづくりで全国的に評価されている小布施。40年にわたってこのまちづくりをけん引してきた立役者たちの軌跡が、一冊の本に描かれています。
文屋は2023年12月に、『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)を出版しました。
このブログでは前回より、小布施をいまある姿に導いたいとこ同士の二人――市村良三さんと市村次夫さんの対話から学ぶ、まちづくりのセンスを磨く19のヒントをご紹介しています。
江戸時代、主要な街道が交差する位置にあった小布施に多くの人や商品、情報が集まり、六斎市は大変賑わっていました。小布施で生まれ育ち、30代で老舗栗菓子店「小布施堂」を継承した「二人の市村」――良三さんと次夫さんは、この時代の交流の歴史からその精神を学んだといいます。
市村家は、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎を小布施に招いた高井鴻山の家系です。鴻山はほかにも江戸や京都から多くの思想家や文人墨客を招き、いまの時代に置き換えれば世界を相手にするほどのスケールで情報を取り込んでいきました。
その精神を手本として二人は高い視座を持ち、外から情報を取り入れて小布施に独自の文化を築いていくことを小布施堂の経営戦略とします。
この戦略は小布施のまちづくりの戦略にもなっています。来訪者との交流を糧に自分たちの生活を彩る美日常のあり方、先人たちから受け継ぎ、未来へと伝えるべき精神を大切にしているのです。
独自文化の形成は自分たちのことを知ることから始まり、それは「本物」を見ることによって導かれます。
良三さんと次夫さんは、古いものや歴史を大切にしながら新しい町並みをつくる小布施の町並み修景事業を始めたとき、全国各地からヨーロッパまで多くの町を見て回りました。
国内では大分県由布院の景観と馴染むように造られた建物群、イタリアではローマの歴史ある建物やアッシジの地形を生かした曲線が印象的な道など、すべて小布施のまちづくりのヒントになっています。
二人が「世界最高の空間」と口をそろえるシエナのカンポ広場は、町にとって重要な草競馬の会場となる住民たちの大切な場です。その美しさに魅せられて造られた小布施の「幟(のぼり)の広場」は、普段は駐車スペースでありながら、イベント広場としても活用できるように造られました。
駐車スペースは風紋のような曲線で表現されていることから、「風の広場」という愛称もつけられています。
町並み修景を行うなかで良三さんと次夫さんが学びとった、建物や町並みを美しくするコツの一つは、「その地域でとれた木や土、石を材として使う」ということでした。
そうすることで、建物は自然と風景に溶け込みます。そこには二人が生まれ育った小布施のまち、子どもの頃に見た原風景の姿がありました。そしてもう一つのコツは、「動くものは派手な色を、動かないものは落ち着いた色を」というもの。秩序と遊びの二面性、美しさと楽しさの混在がある町並みにこそ、二人は面白さを感じます。
どこか懐かしく、ふと落ち着ける安心感のなかにも、ワクワクと楽しい気持ちを湧き立たせる――そんな小布施の町並みは偶然につくられたものではありません。まちづくりを考え尽くした二人の工夫によって、生み出されたものでした。
「いいまち」を目指して幸福に生きる生活者の日常は「美日常」であり、来訪者にとっても日常生活から一歩踏みだしたところにある「美日常」となります。「美日常」においてはじめて、双方の満足は調和し、好循環が末永くつづく土壌が育まれるのです。
「美日常」が体現された小布施のまちづくりに触れてみたいと思われたなら、ぜひ本書のページを開いてみてください。
『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(税込2,200円)は、下記よりご購入いただけます。
↓
【文屋サイト】
https://bunya.shop-pro.jp/?pid=178006972&fbclid=IwAR38iqc99kfcEzJ9qlTWy3ryOIwkL8HQLKSZ6LN6x0Lh4Fltlo1D8Kmlbgw
【Amazon】
https://amzn.asia/d/dT0itDN
美日常が広がる小布施を訪れるなら・・・
ひと・こと・まちをまるごとつなぐ小布施の宿り場 《ゲストハウス小布施》へ