2023年11月24日
「町並み修景」は、古いものや歴史を大切にしながら新しい町並みをつくるまちづくりの手法です。
今では景観・まちづくり分野で馴染みのあるこの「町並み修景」という概念が生まれたのは、1980年代。長野県小布施町のまちづくりに尽力してきた市村良三さんと市村次夫さん、この「二人の市村」による柔軟で先進的なアイデアが起点となっています。
当時、民間が主導して進める町並み修景事業の前例はなく、「小布施方式」と呼ばれました。この事業は全国から高い評価を受けるようになり、「潤いのあるまちづくり優良地方公共団体自治大臣表彰」や「日本建築学会文化賞」「地域文化デザイン賞」などを受賞しました。
文屋は2023年12月に『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)を出版します。
本書は「二人の市村」が積み上げてきた小布施の町並み修景事業のすべてがわかる一冊です。
市村良三さんと市村次夫さんの「町並み修景」というアイデアの根底には、主役はあくまでも住人であるという考え方があります。観光客を呼び寄せることを最重要とするのではなく、そこに生きる人々の快適さを何より大切にし、そのためにはいっさいの妥協をしないということです。
「外はみんなのもの、内は自分のもの」
建物には伝統を感じさせる外観をつくっても、内装まで伝統家屋にしては極寒の地では暮らしていけない――そう考え、むしろ内側には最新の空調技術を取り入れ、住環境の快適さにこだわりました。
暮らす人々にとっての日常が美しく、幸せだからこそ、訪れる人々を魅了して何度でも来たくなる場ができる。小布施のまちづくりの原点はまさにここにあります。
小布施町の「顔」である北斎館周辺は、この美しい日常の象徴ともいえる地域です。たとえば栗の間伐材を敷き詰めた散歩道「栗の小径(こみち)」は、北斎館から高井鴻山記念館を結び、民家の軒先や広場などを散策できるようになっています。風情ある和庭園の眺めは、通る人々にとって心躍る景色です。
そしてこの地域こそ、良三さんと次夫さんの町並み修景事業のスタート地点でした。
1980年代、小布施の老舗栗菓子店である小布施堂を30代で継いだ市村良三さんと市村次夫さんは、地元に密着した企業経営を目指していました。そこで北斎館の周辺に新店舗をつくるため、このエリアの地権者たちに話を聞き、個々に異なるニーズを明確にしていきました。
その後1982年から始まった話し合いは、なんと100回以上、2年間にも及ぶもの。話し合いを尽くし、立場の弱い人が困らないように綿密な計画を立て、移転や引越しにともなう経済的負担を最小限にするといった工夫を重ねていったのです。
まず住宅や工場、店舗などを機能ごとに分けるのではなく、混在させること。
二人は当時主流だった「ゾーニング」とは逆をいく混在性のなかに、町の楽しさや住む人の暮らしやすさを見出しました。
またこの事業の特徴として、町行政が地権者・当事者として応分の費用を負担するだけで、当事者がみな補助金を受けることを前提としなかったことも挙げられます。これは前例や会計期間に縛られず、自由で柔軟なアイデアを実現することにつながります。
公用地と私有地の境をあいまいにしたことも、この地らしい工夫といえるでしょう。庭先や路地を通って、町の奥へと入り込めるようにしたのです。良三さんと次夫さんが子どものころから過ごしてきた田舎らしい文化を、守り続けていくものでした。
こうして完成した北斎館周辺地域が、現在も町の中心地として多くの来訪者を惹きつける象徴的な空間をつくり上げました。そして、町内によりよい景観をつくりだそうという機運を高めていくものになったのです。
小布施の町並み修景事業は、地権者である個人、企業、そして行政が対等な立場で議論をおこないました。
そしてこの当事者たちをつないで理想をカタチにしたのが、著名な建築家である宮本忠長氏です。小布施のまちづくりのコーディネーターの一人として、長野県に拠点を置いていた宮本氏がビジョンを目に見える絵にして共有しました。
建築家が長期的にまちづくりに参加し、当事者たちとともによりよいあり方を探求したという意味でも、小布施の「町並み修景」は先進的な事例といえるでしょう。
他に類を見ない小布施の町並み修景事業、「二人の市村」が描いたビジョンの全貌に興味はありませんか。
そんなあなたに、本書が届くことを願っています。
『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(税込2,200円)は、下記よりご予約受付中です。
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https://bunya.shop-pro.jp/?pid=178006972&fbclid=IwAR38iqc99kfcEzJ9qlTWy3ryOIwkL8HQLKSZ6LN6x0Lh4Fltlo1D8Kmlbgw
【全国の書店・ネット書店にて一般発売】
発売日:2023年12月19日
【小布施町内のみ先行発売】
発売日:2023年11月12日
※11月30日までにご来店の方は、2,000円(税込)にてお求めいただけます。
<発売場所>
① 小布施町観光案内所(小布施文化観光協会事務局)小布施駅舎内
② スワロー亭 おぶせミュージアム中島千波館 前 火水木定休 12時~18時
③ 文屋 長野県上高井郡小布施町飯田45
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