2023年11月16日
みなさんは「まちづくり」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持ちますか。
市町村など地方自治体の都市計画を思い浮かべる人もいるかもしれません。でも町のことを一番よく知っているのは、そこに生きる人々。最近では、住民やNPO法人、企業などが主体となってまちづくりを成功させるケースも多くなっています。
全国から注目される長野県小布施町のまちづくりは、1980年代前後から町並み修景事業を中心に民間主導で行われました。当時は前例がなかったことから「小布施形式」とも呼ばれるこの活動をリードしたのは、前小布施町長の市村良三さんとそのいとこである市村次夫さんでした。
小布施という町で生まれ育った二人の生き方が、まさにこのまちづくりの原点となっています。
文屋は2023年12月に『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)を出版します。
本書は兄弟同然に育った「二人の市村」が、いかに柔軟な発想力と洗練されたセンスでまちづくりを先導したかを解き明かす一冊。今回は、その原点となる二人のライフヒストリーの一部をご紹介します。
1948年、父親同士が兄弟である市村良三さんと市村次夫さんは20日違いで生まれ、小学校入学まで同じ屋根の下で育ちました。ともに過ごした二人は、互いに「二卵性双生児」と表現するほどの間柄に。言葉にせずとも心が通じ合えるほどの関係性を築きました。
まだ戦後間もない小布施は当時、日本中の他の地域と同じく貧しい町。それでも二人は仲間とともに千曲川で水遊びをしたり、河川敷の畑に実ったスイカを食べたりと、子ども時代を楽しんでいました。
町の建物は土台となる石、壁や柱も地元で取れた材でつくられており、風景に溶け込んでいます。家ごとに異なるさまざまな種類の木が並木をつくり、毎朝落ち葉を掃き清める人々の姿も見られました。
多くの人にとっては当たり前の日々の景色――しかし良三さんと次夫さんの二人は、この尊い日常をずっと記憶しています。
二人は非日常ではなく、ごく普通の人の暮らしの営みのなかに美しさを感じていました。この感性はのちに小布施のまちづくりの軸となり、有名なリゾート施設もスキー場もないこの地を、年間120万人もの来訪者を呼び寄せる町にしていきます。
良三さんの父である市村公平さんと、次夫さんの父である市村郁夫さんの兄弟は、どちらも小布施町で大切な役割を担う人物でした。
市村家は老舗栗菓子店「小布施堂」と日本酒の酒蔵・桝一市村酒造場を経営。それだけでなく公平さんは町議会議員や助役などの公職に就き、郁夫さんは県議会議員を経て、亡くなる前10 年間は小布施町長を務めています。
良三さん、次夫さんの二人は、それぞれに父と「おじさん」からまちづくりのエッセンスを学びます。なかでも小布施町長を務めていた郁夫さんからの学びは、後に同じ役に就くことになる良三さんにとって常に心の中にあるものでした。
特に小布施の「顔」とも言える「北斎館」への想いは、その核となるものです。
葛飾北斎の肉筆画を展示する北斎館は、小布施町に人を呼び寄せる大きな価値があるものですが、設立時には賛否両論がありました。小布施堂と桝一市村酒造場の近くにあり、「我田引水」という誹謗中傷もあったのです。
北斎館設立の目的は、小布施町の宝である北斎の肉筆画を守って継承し、北斎研究を発展させること。お客さんが来るかどうかはあくまでもその結果にすぎない――。
良三さんと次夫さんにこう語った市村郁夫という人は、人の上に立つ者として公私の区別を明確にし、自分を律して能力以上の仕事をする人物でした。そのあり方は二人の心に大きく刻まれています。
後に郁夫さんが危篤となったときに病院に向かう車中で、唯一無二の盟友であった市村良三さんと市村次夫さんはついに、ともに小布施を盛り立てていくことを誓い合います。
北斎館を「顔」としつつも、二人が少年時代から変わらない日常の美しさを誇り、生活者と来訪者がイキイキと交流できるまちをつくること。
「ライブラリーからライブへ」――それが小布施に新たなビジョンを掲げた二人のまちづくりの幕開けでした。
このビジョンはこのあと、どのように展開していくのでしょうか。
ここでは語りきれない良三さんと次夫さんのライフヒストリー、そしてその後のプロセスをぜひ、本書でお楽しみください。
『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(税込2,200円)は、下記よりご予約受付中です。
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https://bunya.shop-pro.jp/?pid=178006972&fbclid=IwAR38iqc99kfcEzJ9qlTWy3ryOIwkL8HQLKSZ6LN6x0Lh4Fltlo1D8Kmlbgw
【全国の書店・ネット書店にて一般発売】
発売日:2023年12月19日
【小布施町内のみ先行発売】
発売日:2023年11月12日
※11月30日までにご来店の方は、2,000円(税込)にてお求めいただけます。
<発売場所>
① 小布施町観光案内所(小布施文化観光協会事務局)小布施駅舎内
② スワロー亭 おぶせミュージアム中島千波館 前 火水木定休 12時~18時
③ 文屋 長野県上高井郡小布施町飯田45
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