2023年11月2日

小布施にはなぜリピーターが多いのか?―「人」を中心とした持続可能なまちづくりとは

SDGsが掲げる17のゴールのうちの一つにも挙げられている「住み続けられるまちづくり」。まちづくり、まちおこし事業は日本各地で数々の成功事例がありますが、長野県小布施町はそのなかでもひときわ目立つ存在です。

世界遺産や大型商業施設など、いわゆる“観光の目玉”がないこの小さな町の資源は「人」のみ。小布施はその歴史のなかで「人」の活力源となる交流を発展させ、いまも年間120万人の来訪者を集める町です。

しかもその多くは再訪者――リピーターなのです。

「人」を中心とした交流文化によってまちを発展させた小布施町の取り組みには、持続可能なまちづくりのヒントが多くあるように思えます。

今回はリピーターの多い町、小布施をつくりあげた交流の風土と歴史に迫ってみましょう。

小布施の交流文化の原点――北斎を迎え入れた高井鴻山(たかいこうざん)

人と人との交流が独自の文化を生み出した小布施の歴史は、江戸時代に遡ります。小布施の豪農、豪商たちは当時、詩文や書画などの風流に親しむ客人を多く招き入れており、小林一茶などとの頻繁なやり取りの記録がいまも残されています。

その豪農、豪商の家に生まれた高井鴻山が、まさに小布施文化の原点です。

若き日の遊学を経て小布施に戻った鴻山は、その後江戸や京都から思想家や芸術家を招いて交流を深めた教養人である一方で、飢饉の際には蔵を開いて困窮者を救う人格者でもありました。

鴻山は、世界的に著名な画家・葛飾北斎を小布施に迎え入れた人物としても有名です。北斎は晩年、83 歳で初めて小布施を訪れ、90 歳で亡くなるまで数回にわたって長期滞在しました。このとき、自宅にアトリエをつくって手厚くもてなした鴻山は北斎より40歳以上も若かったにもかかわらず、互いに友情を育んでいったのです。

浮世絵師として名をはせながらも、晩年に多くの肉筆画を手がけた北斎は、小布施に滞在したときにも数々の名品を描きました。小布施町の中心部にある「北斎館」には、小布施に残された北斎の肉筆画が展示されており、150年を経てもなおこの町に文化・経済的効果、なにより誇りや美学をもたらしています。

120万人の来訪者を迎え入れる「まれ人みな北斎論」

北斎の小布施での足跡は、鴻山との関係性の深さを象徴するものです。しかし北斎が長期滞在を繰り返した背景には、鴻山ひとりではつくり出せない小布施の町そのものの魅力があります。

それは時代を経ても見られる小布施人(おぶせびと)の来訪者への態度からも想像できるものです。

第二次世界大戦中、小布施の人々はこの地に疎開してきた日本画家や作詞家などの文化人たちを住民として招き入れ、協働して文化事業を営みました。

「よそ者」を歓待し、変化を受け入れて新たな風土をつくっていくこの柔軟な創造力こそ、鴻山から受け継がれたものでしょう。小布施文化の底流にあるのは、「客人=まれびと」は誰もが北斎のような新たな風を吹き込んでくれる人、すなわち「まれびとみな北斎論」の考え方です。

小布施町の風土と歴史に刻み込まれた来訪者を大切にするこころは、訪れる人とともに日常のなかで小さな幸せを積み上げていきます。「まれびとみな北斎論」は、時代の潮流に流されない小布施のまちづくりの信念であるといえるでしょう。

持続可能なまちづくり――生活者が来訪者ともにつくる幸せな時間と空間

長い歴史のなかで、小布施もまたほかの地域と同じ危機に瀕すことがありました。高度経済成長期のころには過疎化が進んでいます。1950年から1970年の間に、小布施町の人口は約11,000人から約9,600人に減少しました。しかしその後、日本国そのものの人口が減りつつ現在までに、小布施町の人口は再び約11,000人に回復しています。

1976年に北斎館が開館、その後周辺のレストランや栗菓子屋などの小売店も開業したことで、小布施には確かに多くの人々が訪れるようになりました。しかし人々は北斎館に来てお土産を買うためだけに何度も来訪しているのでしょうか。

「また来たい」と思わせる小布施の魅力は、「まれびとみな北斎論」の神髄にある来訪者とともにつくるより日常的で本質的な幸せのなかにあるように思えます。

そのことを象徴しているのが、小布施の町並み修景事業です。北斎館周辺に心地良い空間を形成することから始まったこの事業は、やがて多くの住民たちの景観に対する意識を高めました。「花のまちづくり」を掲げた小布施では、130軒を超える民家や商店などの庭を来訪者に開放するオープンガーデン事業に参加しています。

生活者と来訪者がともにつくる幸せな時間と空間――鴻山と北斎を原点とする交流の文化が、確かにここにあります。

小布施にはなぜリピーターが多いのか。あなたもぜひ訪れて、ご自身の目で確かめてみませんか。

《ゲストハウス小布施》北斎館のすぐ近く、江戸時代からある古民家と土蔵を活かした3室のお宿です。周辺を散策したであろう北斎の魂をあなたも感じられるかもしれません。

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