2025年3月6日

魂のままに輝く人生の扉が開く――江戸期を「わがまま」に生きた北斎画が創造する新たな世界観

2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の主人公は、「江戸のメディア王」と称される蔦屋重三郎。開始から数ヶ月、出版を通して吉原の遊女たちを救おうと翻弄する重三郎の姿が生き生きと描かれています。

この重三郎のメンターのような存在として登場しているのが、当時すでに学問や芸術など多分野で才能を発揮していた平賀源内です。自身の思いを実現するために試行錯誤する重三郎に、源内はこのような言葉を投げかけました。

世の中には人を縛るいろんな理屈があるじゃねえか。親とか生まれとか家、義理人情。けどそんなものは顧みずに、自らの思いによってのみ『我が心のママ』に生きる。わがままに生きることを自由に生きるっつうのよ。(『べらぼう』5話より)

ドラマが今後どのように展開するか楽しみですが、史実において重三郎は「お上」の規制にも負けず思うままに出版活動を続け、結果として江戸に新たな娯楽文化を開花させました。

重三郎は歴史に名を残す絵師たちを世に出し、そのなかに現在も不動の人気を博す葛飾北斎がいたことも知られています。そしてこの北斎こそ、絵師として「人生をわがままに、自由に生きた」人物に違いありませんでした。

絵師としての葛飾北斎の基礎を築いた蔦屋重三郎

若き蔦屋重三郎にとって、20歳以上年上であった平賀源内がもし冒頭のような言葉を語ったなら、それは深く心に刻まれたことでしょう。重三郎の人生は47歳で終焉を迎えますが、この短い生涯のなかで喜多川歌麿や東洲斎写楽などを世に出し、浮世絵を庶民文化に根付かせています。

また重三郎は、若いころの葛飾北斎(当時の雅号は勝川春朗)の才能を見抜き、自身の出版事業において挿絵や版画などで起用しています。北斎の画業を後押しし、いずれは歌麿や写楽のように世に広く売り出すことを考えていたと思われますが、志叶わず重三郎は他界しました。


一方、北斎は重三郎に与えられた機会によって歌舞伎絵や挿絵本など多数の風俗画を描き、画業の礎を築きました。そしてその後は独自の画風を追究し、やがて「森羅万象こそ唯一の師」と公言。風景画や漫画など、いまも北斎の代名詞となっている傑作を多く生み出しています。

重三郎に導かれた時間は短かったものの、その存在は北斎の絵師としての基礎を造るうえでなくてはならないものといえるでしょう。

「画狂老人」葛飾北斎を支えたもう一人のサポーター高井鴻山(こうざん)

若くして早世した蔦屋重三郎とは異なり、葛飾北斎は90歳まで長寿を全うしました。それでも死に際に「天があと5年間、私に命を保つことを許してくれたなら、本物の画工になることができただろう…」と語るほど、絵に心血を注いだ生涯でした。


そのため晩年には、自身を「画狂老人」と称した北斎。83歳のとき、今度は自分の孫ほども歳の離れた新たなサポーターと出会います。37歳であった地元の豪商・高井鴻山に招かれ、北斎は最晩年に江戸から遠く離れた信州小布施まで何度も足を運び、長期滞在して貴重な大作を残しました。


当時、信州をはじめ江戸や京阪北陸、瀬戸内まで広く商いを行っていた高井家に生まれた鴻山は、15歳のころから16年間、京都や江戸に遊学していた人物です。各分野で一流の人々に学問や芸術を学び、豪商というよりは文化人として、数多くの文人墨客(ぶんじんぼっかく)を自宅サロンに招いていました。

北斎と鴻山は「先生」「旦那様」と呼び合い、年は離れていたものの互いにその熱意を認めて信頼関係を築きます。鴻山は北斎のために自宅にアトリエをつくり、寝食の世話から画材の提供まですべてを担いました。北斎は鴻山のもてなしによって、小布施で思う存分画技を究めることができたのです。

魂のままに輝く人生の扉が開く――小布施が発信する北斎画の新たな世界観

若き日に蔦屋重三郎によって才能を開花させ、晩年には高井鴻山に導かれた葛飾北斎。支援者に出会い命が尽きるまで描き続けた北斎の生き方は、まさに「我が心のママ」であり、このうえなく自由なものでした。

日本の歴史のなかで時を超えたいまも色あせず、国内外でここまでの影響力を持つ絵師は北斎のほかにはいないでしょう。その背景には、圧倒的な才能と執念といえるほどの画業への情熱があります。

そして北斎に共感し、支援した人たちもまた、自分の奥底にある魂の叫びに従い、規制の多い時代であっても心のままに自分の人生を生きた人物でした。

わがままに生きる、自由に生きるということは、現代社会でも簡単なことではありません。しかしその実現を心から望むのであれば、目を向けるべきは周囲の状況ではなく、自分自身の生き方である――北斎が小布施に残した絵が、そのことを語っています。

2025年初夏、文屋は「わがまま」に生きた北斎のビジュアルアートと北斎に捧げる舞の共演によって、すべての人が自身の壁を打ち破り、真の自分と出会える舞台を開催します。

魂のままに輝く人生の扉が開く――そこには小布施に残した北斎画が創造する新たな世界観があります。ぜひ、あなたも体感してみてください。


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