2024年6月27日
江戸時代に活躍し、令和のいまも国内外で不動の人気を博す天才絵師·葛飾北斎。北斎が晩年に何度も訪れた信州小布施には、その画業の集大成ともいえる数々の秀作が残されています。
これらの貴重な作品が小布施から離れることを防ぐため、1976年、町の中心街に「北斎館」が開設されました。ここには北斎が小布施で描いた肉筆画を中心に、800点ほどの作品が収蔵されています。
北斎館は、小布施のまちづくりの原点ともいえる場所です。北斎の作品を一般公開するだけでなく、北斎の調査研究の重要拠点となり、町民たちに小布施を北斎ゆかりの地として意識喚起することもその役割としているからです。
2026年に開館50周年を迎える北斎館はいま、この活動を海外まで広げていこうとしています。そして同じように「小布施から世界へ」を信条に掲げる文屋は、北斎館と長きにわたる縁をより強固にし、2024年春に共同プロジェクトを立ち上げました。
この「北斎が見た小布施」プロジェクトは、まもなく最初の大イベントを迎えようとしています。
北斎館は海外展開への第一歩として、2024年7月1日から25日までイギリス東部の街ノリッジにて、北斎の作品の展覧会を開催します。
セインズベリー日本藝術研究所との共同企画によって行われるこの展覧会では、小布施が誇る上町祭屋台天井絵「怒濤図」の「男浪」と「女浪」、東町祭屋台の天井絵「龍」と「鳳凰」、岩松院本堂の天井絵「八方にらみ鳳凰図」など12点の作品が展示される予定です。
ここで注目されるのは、これらの作品が高精細でデジタル化された複製画として展示されるということ。NTT Art Technology社とアルステクネ社の協力により、最先端技術によってつくられた高精細レプリカは、学芸員にも見分けがつかないほどの出来映えです。
遠方へ持ち運ぶことが難しい貴重な作品を精巧な技術で複製し、より多くの人々に北斎アートの神髄を楽しんでいただくこと。北斎の作品を過去の文化遺産としてではなく、新たな文化を創る発信地にしようとする北斎館の試みは、美術鑑賞のあり方にもイノベーションを起こすものになるでしょう。
北斎館の新たな挑戦と時を同じくして、文屋もまた地元·小布施と向き合う機会が重なりました。
2023年、文屋は書籍『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙·著)を制作、出版しています。また同年、町の中心に江戸時代からある民家と土蔵を改築した≪ゲストハウス小布施≫をリニューアルオープンしました。
こうしたなかで、小布施のさらなる発展のために何ができるのかを再考した文屋代表·木下豊は、小布施に残るさまざまな歴史にあらためて大きな価値を見出しました。
「江戸期からいまも小布施に残る建物や風景などを、写真と説明文によって世界中の人々に伝えたい」――。
≪ゲストハウス小布施≫をはじめ、小布施には北斎が生きた時代からいまも残る建築物、そして文化や食べ物が多くあります。
晩年になるほど画業を究めたと言われる北斎が小布施で何を見て、どのような経験をしたのか――。それを紐解くことは、北斎ゆかりの地としての小布施を発展させるうえで不可欠であると木下は考えました。
木下がこの想いを北斎館理事長である市村次夫さんに語った結果、市村さんは協力を惜しまないと返答してくれました。さらにその後すぐ「その企画を北斎館で引き受けたい」と申し出てくれたのです。
こうして始まった「北斎が見た小布施」プロジェクトにて制作を決めた英語版のパンフレットが、このほど完成しました。このパンフレットはさっそく、ノリッジの展覧会で配布されることになっています。
木下は前小布施町長の市村良三さん、そして北斎館現理事長かつ老舗栗菓子店「小布施堂」社長である市村次夫さんと40年来の旧知の仲であり、二人から学んだまちづくりのセンスを文屋での活動に生かしています。
そして今回、共同プロジェクトとしての英語パンフレット制作にあたり、あらためて「二人の市村」さんが手がけた町並み修景事業によって創られた小布施というまち、ここにある伝統のなかにも洗練された「いま」の価値を再認識しました。
そして小布施が目指す未来は、かつて北斎を迎え、40歳もの歳の差を超えた友情によって創作活動を支援した高井鴻山(たかいこうざん)に倣い、未来を創る人々を支援するまちとなることです。
北斎館と文屋はこの目的を共有し、今回のパンフレット制作を起点として今後もさまざまなアイデアを実現していきます。
葛飾北斎ゆかりの地として独自の発展を見せた小布施のまちづくり。その軌跡がわかる書籍『小布施まちづくりのセンス――二人の市村』(磯野謙・著)は文屋より好評発売中です。
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