2024年4月11日

「北斎の見た小布施」そして未来へ――新プロジェクトに込めた文屋のビジョン

2024年、桜前線が北上を続けています。寒い地域でも新芽が芽吹き、満開の桜が見られる日も近づいてきました。花の美しさが日常を潤す春のはじまりです。


「栗と北斎と花のまち」として知られる長野県小布施町では、130を超える民家や商店の庭がオープンガーデンを開放し、訪れる人々を楽しませています。

特別な空間ではなく日々の暮らしのなかで、来訪者と美しい日常を共有できるまち小布施。永く受け継がれ、いまも大切に育てられているこのまちの気風に魅せられた歴史上の人物をご存じでしょうか。

江戸時代を生きた人気浮世絵師・葛飾北斎は、83歳で初めて小布施を訪れてから何度も再訪して長期滞在し、自身の集大成ともいえる作品を多く制作しました。「北斎の聖地」ともいえる小布施には、北斎が見た建物や風景がいまもたくさん残っています。

文屋は2024年春、北斎の肉筆画を多く展示している小布施の「顔」・北斎館と協働し、北斎が生きた日常を全世界のファンに共有していただく新プロジェクトを展開します。

葛飾北斎の「浪」は最晩年に完成された

北斎の生き方を象徴する一つの視点として、「浪」があります。


米国のLife誌が調査した「この1000年で偉大な業績を残した人物100人」のなかで、ただ一人日本人として選出された葛飾北斎。いわば「世界で一番有名な日本人」である北斎の代表作「神奈川沖浪裏(なみうら)」はThe Great Wave off Kanagawaと呼ばれ、「世界でモナリザの次に有名な絵」といわれています。

この絵(版画の原画)を描いたとき、北斎はすでに70代前半でした。しかしこの絵は「70歳までに描いた絵は取るに足らない」と自ら酷評した年代の作品でもあります。

北斎はその後、80代後半に小布施で3年の歳月をかけて上町(かんまち)祭り屋台の天井絵「怒涛図」の男浪・女浪(おなみ・めなみ)を完成させました。

神奈川沖浪裏は、大胆な構図ながら「風景画」の域にとどまるのに対して、「怒涛図」には「宇宙」が描かれています。15年の歳月を経て、北斎は小布施の地で「浪」を完成させたといえるでしょう。

自身を「画狂老人」と呼ぶほど、画の道に人生をかけていた北斎。80代になっても満足せず、対象の深淵を描くことに没頭するその生き方が反映されているからこそ、北斎の作品には多くの人を惹きつける魅力があるのでしょう。

世界へ発信――北斎の日常を追体験できる小布施の魅力

北斎アートに魅了されるファンにとって、北斎が何を見てどのように過ごしたかということはとても興味深いものです。東京は関東大震災や東京大空襲、高度成長期の開発によって、多くの歴史的建築物を失いましたが、小布施には多くの建物が残っています。


文屋が経営するゲストハウス小布施もその一つ。江戸時代に建てられた古民家と土蔵を改築した3部屋の宿は、自宅をアトリエとして北斎に提供した高井鴻山(たかいこうざん)邸から歩いて数分の場所にあります。北斎は散歩をしながらながめていたことでしょう。

そのほかにも、高井家の血筋にある市村家の正門や米蔵、酒蔵、また岩松院、祥雲寺などの社寺のほか、江戸期から残る建物は数知れず。栗や和りんご、丸ナスや日本酒などもいまに受け継がれています。


今回のプロジェクトでは、このように北斎が見たり食したりしたものを写真や解説文で詳しく紹介していきます。まさに小布施で経験した北斎の日常を体感できるものです。

こうした資料は日本語のみならず、英訳して世界へも発信します。英語版パンフレットは、2024年7月にイギリス東部の街・ノリッジでおこなわれる企画展「Japan in Norwich」でも配布予定。企画展では目玉の一つとして、北斎館の北斎作品を展示されることになっています。

北斎の生き方に触れ、未来志向の感性を磨く

文屋が描くビジョンは、北斎の経験を過去のものとして記憶にとどめておくことではありません。90歳の生涯を終えるまで絵師としての可能性を追い求めた北斎の生き方に触れ、訪れる人々に新たな発見と創造の力で未来志向の感性を磨いていただくことです。

たとえば毎年咲いては散っていく桜の景色――でもその年によって、ほんの少し違う風景に見えることはありませんか。同じ桜でも、そのときの心もようの変化が目の前の風景を異なるものとして映し出します。

北斎が晩年まで描きつづけた「浪」のように、時の流れや思考の深まりが同じ対象であってもより洗練されたイメージを映し出す。このような変化を楽しむ心は、新たな未来を創造するための大きな力となります。

「北斎の聖地」で一人ひとりがもつ北斎の感性を磨き、未来を創造すること。文屋が描く未来志向のビジョンを多くのみなさまに楽しんでいただけるよう、このプロジェクトに力を尽くしていきます。どうぞご一緒にお楽しみください。


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