2003年5月22日
みなさん、こんにちは。
きょうは、信濃の俳人・小林一茶さんのお話です。
一茶さんは、江戸末期に小布施に近い柏原(信濃町)に生まれ、晩年には小布施に300泊以上して俳人たちと交わりました。「栗拾い ねんねんころり いいながら」「都でも 引けはとらぬや 丹波栗」など、小布施の栗を詠んだ作品も数多く残されています。
わたくしが編集工学を学んでいる松岡正剛先生は「千夜千冊」で一茶さんを取りあげ、次のように書いています。
オノマトペイアとは、擬態語(ワクワクなど)、擬声語(ワンワンなど)をさします。
松岡正剛校長「千夜千冊」第七百六十七夜(2003年5月6日)
小林一茶『一茶俳句集』(1990年、岩波文庫、丸山一彦校注)
一茶の「小」と「大」には「一茶のあいだ」がある。句作のうえではこの「あいだ」は律動によって占められた。一茶は言葉のリズムをそうとうに確信し、もともとの五七五という律動をさらに自分の律動で埋め、その律動で外へ出た。(中略)
この惟然坊がオノマトペイアやリフレインが旨かった。それを一茶がどのように注目したかは知らないが、ぼくが見るかぎりはそうとうに吸収した。
とはいえしかし、一茶はこれを一茶の律動感にして、自分の好きな「あいだの律動」を擬音にし、擬態にしていった。実は「蝿が手をするのも」「雀の子」も、擬態というふうに見たほうが一茶に近かったのだ。
以下、そのような一茶の堪能で大胆きわまりない擬音擬態を駆使した律動的俳諧だけを抜粋しておこう。おそらくこれらを読めば、旧来の一茶観はさらにさらに大きく一変するにちがいない。句作順に並べておいた。(一部を掲載)
ざぶりざぶり ざぶり雨ふる枯野かな
艸山(くさやま)の くりくり晴れし春の雨
うそうそと 雨降るなかを春の蝶
ほちゃほちゃと 薮あさがほの咲きにけり
木枯に ぐすぐす豚の寝たりけり
陽炎の づんづと伸びる葎かな
花散りて ゲツクリ長くなる日かな
夕風呂の だぶりだぶりとかすみかな
花の月と ちんぷんかん浮世かな
雁ごやごや おれが噂を致すかな
うまさうな 雪がふうはりふはりかな
麦に菜に てんてん舞の小てふかな
かげらふに くいくい猫のいびきかな
竹の子の ウンプテンプの出所かな
風ひやり ひやりからだの〆(しま)りかな
寝た下を 木枯づうんづうんかな
(以上で抜粋終わり)
このたび、この一茶俳句を使った「オノマトペイア・かみしもはいきんぐ(KMISHIMO HAIKING)」なるお遊びを考案しました。
つぎのようなものです。ネット上の学び舎「ISIS編集学校」でともに学んでいる香川県の三原美香さんが、24日に開くハイパー汁講(交流懇親会)の余興として考えたものです。
KAMISHIMO HAIKING(裃・かみしも はいきんぐ)
「千夜千冊 一茶さん篇」その遊び方 指南書
〜ロール・ルール・ツール〜
1 はじめに
2 袋「い」(六角形の箱)
3 袋「ろ」
4 袋「は」
5 袋「に」(紙の手提げ袋)
【透玄きょうの一句】「稲妻や 障子は毛羽の 影伸ばし」